第1章 設立
第1節 総則
・  株式会社を設立するには①発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける発起設立という方法と、②発起人は設立時発行株式の一部を引き受け、残りを他から募集する募集設立という方法があります。
・  発起人は株式会社の設立に際して、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません(25条2項)。株を引き受けさせることによって会社に利害関係を持たせ、それによって会社設立業務を適正化させようという趣旨です。自分も出資していれば、事業成功のため精一杯働くだろうということです。
・  今回の改正で注目を浴びているものの1つに最低資本金制度がなくなった事が挙げられます。以前は株式会社で1000万円、有限会社で300万円の資本金が最低必要だったので、それに比べたら会社を設立しやすくなっています。
 なぜ、そもそも資本金という制度があったのでしょうか。それは、会社債権者を保護するためです。法が株式会社に資本金に見合うだけの資産を保有することを強制することによって、株式会社と取引しようとする者の保護を図ろうとしたのです。会社が個人事業よりも信用されるのはこの点です。
 しかし、改正法によって最低資本金制度がなくなりました。設立に際しては最低1円の出資が必要なので(発起人が1人で株式会社を作り、募集はしない場合)、設立直後は、資本金は1円以上あるはずですが、設立後は資本減少の手続きによって、資本金を0円とすることもできるようになったのです。
 ただし、会社債権者の保護も必要なので、会社法458条は株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、453条に規定する剰余金配当(利益配当)ができないと定め、「少なくとも旧有限会社の最低資本金300万円ぐらいは資産を保有しておきなさい」と資産の保有を強制しています。
第2節 定款の作成(発起設立・募集設立共通)


・  定款とは、会社の基本的なことを記載した、いわば会社の憲法です。定款は発起人が作成し、発起人全員がこの定款に署名又は記名押印もしくは電子署名をしなくてはなりません。署名とはサインのことで、記名押印とは記名は印字したものでそこに印鑑を押すことです。定款は必ずしも紙で作る必要はなく電磁的記録(フロッピーディスク等)でもよく、その際には署名等はできないので電子署名をすることになります。
・ 定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じません。これは株式会社のみの規制で、他の持分会社には適用されません。しかも、定款の認証を受けた後は、会社が成立するまで基本的に定款を変更することはできません(30条2項)。例外として、①裁判所が関与した場合、②(募集設立に限りますが)創立総会の決議による場合、③発行可能株式総数の設定等を定めた場合には定款の変更ができます。

【発起人について】
発起人とは、会社設立の企画者にとして定款に署名又は記名押印又は電子署名をした者と説明されます。発起人は制限行為能力者や外国人でも、また法人でもなりえます。法人は公法人(国や地方公共団体のこと)でも私法人でも構いません。発起人は1名でも構いません(平成2年に7人以上必要という規制はなくなっています)。また、各発起人は株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなくてはなりません。



【定款の記載事項について】
(絶対的記載事項)…定款に必ず記載しておかなければならない事項
①目的 ②商号 ③本店の所在地 ④設立に際して出資される財産の価格又はその最低額 ⑤発起人の氏名又は名称及び住所
・ 発起人の「氏名又は名称」となっているのは、氏名は自然人、名称は法人と分けているからです。
・ 以前はこれら五つ以外に「会社が発行する株式の総数」と「会社が公告をする方法」が絶対的記載事項となっていました。
「会社が公告をする方法」については記載しなくてもいいですが、その際には公告方法は官報とみなされてしまいます。公告しなくてもよいのではありません。また、公告方法は定款には記載しなくてもいいのですが、登記事項ではあります。
「会社が発行する株式の総数」(会社法においては発行可能株式総数と言い換えられています)については、確かに原始定款(認証を受けるまでの定款)には記載しなくてもいいのですが、会社成立までに定める必要があります。なお、発行可能株式総数は発起人全員の同意(又は創立総会決議)によって決めます。

(相対的記載事項)…定款に必ずしも記載する必要はないのですが、その記載がなければ効力が生じない事項(変態設立事項ともいいます)
①現物出資 ②財産引受 ③発起人が受ける報酬、発起人が受ける特別利益 ④設立費用
・  通常、出資は金銭でなされます。しかし、必ずしも金銭でなくてもよく不動産や株券などの有価証券などでも出資はできます。通常ではない、ノーマルではない、いわゆるアブノーマルということで変態と名づけられています。「現物出資」は金銭の代わりに不動産などを出資するケースで、検査役の検査が必要になったりします。
 すると、この手続きを免れるために、「会社が設立してから会社に不動産を売却するという形式にすればいいではないか?」と考える人が出てきます。このようなケースを財産引受といい、この財産引受も変態設立事項にして、現物出資と同様に規制をかけようということになりました。
 なぜ、規制するのでしょうか。金銭は価値がはっきりしています。100万円の金銭は100万円の価値があるのは明白です。しかし、土地などの場合、当事者で500万円の価値があると取り決めて、500万円分の株式をもらっても実際の価値は100万円しかないということがありえます。これでは、他の金銭で出資をした株主と不平等を来たします。だから、不正のないようにと、規制をかけています。③の報酬等や④の設立費用は会社に不当に損害が出る可能性があるので変態設立事項となっています。
・  現物出資をすることができるのは発起人に限ります。発起人は会社に対し、職務を忠実に遂行する義務をもっています。損害を生じさせれば賠償責任も負います。だから、現物出資をする人は単なる株主の立場ではなく発起人の立場にまでもって行かせたのです。
・  設立費用についてですが(例えば事務所の賃貸費や広告代などです)、本来、会社が負担するものなので、発起人がこれらのお金を支払ったなら会社に対して、返還請求ができます(設立中の会社は法人格がないので契約の当事者にはなれません。だから発起人が費用を捻出するのです)。しかし、これを無制限に認めると会社の財産的基盤を損ないかねないので変態設立事項としています。しかし、会社に損害を与える恐れのないものは変態設立事項にしなくてもよいだろう、ということで定款の認証手数料や設立登記の際の登録免許税等は除かれます。

(任意的記載事項)…絶対的記載事項・相対的記載事項以外で会社が任意に記載することができる事項
・  法律に反しない範囲で記載できます(29条)。具体例としては、営業年度や役員報酬に関する規定、があります。
第3節 出資(発起設立・募集設立共通)
【設立時発行株式に関する事項の決定】
・  発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く)を定めようとするときは、発起人の全員の同意を得なければなりません(32条1項)。発起人同士で何かを決めるとき原則は過半数の同意で足りますが、このケースは重要な事項なので「全員の同意」を要求しています。
 ①発起人が割り当てを受ける設立時発行株式の数。
 ② ①と引き換えに払い込む金銭の額。
 ③成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項。
・  先に設立手続きの概略図を示しましたが、そこには定款の作成・認証後に、設立時発行株式に関する事項の決定をすることになっています。ただ、実際のケースでは「資本金をいくらにするか」などはむしろ一番初めに決めるか、定款の作成と平行して決定するところだと思います。一般的な法律書では条文の配列どおりに解説するので、先の設立手続きの概略図のようになるのです。
・  「設立時発行株式の数」について、以前は会社が発行することができる株式の総数の4分の1を下ってはいけないと規定されていました。もし会社が将来4000株までは発行できるようにしておこうと決めたら、設立段階で1000株は発行しておきなさい、ということです。しかし、改正によって非公開会社においてはこのような規制はなくなり、公開会社のみの規制となっています。非公開会社とは株式を譲渡するには取締役会の承認を要する等、自由に株式が譲渡できない会社です。詳しくは「株式」のところで説明します。
・  設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、発起人が割り当てを受ける設立時発行株式が剰余金の配当に関する種類株式でその具体的配当額は株主総会等の決議によって定める旨の定款の定めがあるものであるときは、発起人は、その全員の同意を得て、当該設立時発行株式の内容を定めなければなりません(32条2項)。
※種類株式が分からないと、書いてある意味が分からないと思います。「株式」編で株式の種類を説明しますので、それまでは読み飛ばしてください。

【検査役の選任】
(検査役の選任・調査、その後の対応)
・  発起人は、定款に変態設立事項に関する記載がある場合、公証人の認証後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対して、検査役の選任を申し立てなければなりません(33条1項)。以前は、発起設立の場合は取締役が検査役の選任を申し立てていましたが、改正法により発起設立・募集設立を問わず、対外的活動は発起人がすべきということで、発起人が申し立てをすることになっています。
・  申し立てがあった場合は、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなくてはなりません(33条2項)。不適法というのは訴訟法の用語で、書類が備わってないなど、法で定めた用件が具備されていないことをいいます。
・  選任された検査役は、必要な調査を行い、その調査の結果を記載した書面等を裁判所に提供して報告します。裁判所によって選任されているので裁判所に対して報告をします(33条4項)。発起人に対してではありません。ただ、発起人に対しても情報提供は必要なので、裁判所に対する報告の後、書面の写し等を提供します(33条6項)。
・  裁判所の対応としては、検査役からの報告を受けて、変態設立事項を不当と認めたときは、これを変更する決定をします(33条7項)。
・  一方、この決定に対する発起人の対応としては、裁判所の変更決定に納得すればいいのですが、納得がいかない場合は、当該決定の確定後1週間以内に限り、株式の引き受けにかかる意思表示を取り消しできます。また、発起人全員の同意をもって、当該決定の確定後1週間以内に限り、当該定款の定めを廃止することもできます。「現物出資はやめた」といえるのです。
【検査役の調査の省略】
・  このように、検査役の調査は面倒です。「何で、会社を設立するのに裁判所が絡んでくるのか?面倒だな!」と思いたくなります。そこで、法は、一定の場合に検査役の調査を省略できるとしています。
・  以下のいずれかに該当する場合に、省略が可能です(33条10項)。なお、この例外は現物出資と財産引受のみに認められます。発起人の報酬などには認められません。

①少額財産の特例…現物出資・財産引受の目的財産について、定款に記載された価額の総額が500万円を超えない。
②市場価格のある有価証券の特例…目的財産のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が、その市場価額が法務省令で定める方法により算定されるものを超えない。(※)
③弁護士等の証明がある場合の特例…定款に記載した価額が相当であると弁護士等の証明がある場合。目的財産が不動産である場合はこの証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価を受けている必要があり。(※)
※法務省令を要約すると、定款認証日における証券取引所での最終価格か定款認証日における公開買い付け価格のどちらか高い額をもって基準とする、となっています。 
※弁護士等には弁護士のほか弁護士法人・公認会計士(外国公認会計士を含む)・監査法人・税理士・税理士法人が含まれています。ただし、その弁護士等が発起人であったり、財産引受の財産の譲渡人であったりする場合など、一定の「欠格事由」に該当するときは、証明・鑑定はできません。
【事後設立】
・  事後設立とは株式会社の成立後2年以内に、その会社の成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものを取得する行為を言います。株式会社がこの「事後設立」をする場合には、当該行為の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議による承認が必要です。特別決議とは議決権を有することができる株主の議決権の過半数(定款で過半数を3分の1まで減らすことはできます。これを定足数といいます)を有する株主が出席し、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成による決議です。
・  先ほど、現物出資・財産引受には検査役の調査が必要と説明しましたが、これを逃れるために、財産の売買契約を会社成立後にしようとする人が出てきます(財産引受はあくまで会社成立前に約束をしています)。これでは、財産引受の潜脱行為になってしまいます。そこで、このような制約が設けられたのです。
・  以前は、「事後設立」でも検査役の調査を必要としていましたが、改正法により検査役の調査までは必要ないとして、株主総会の特別決議のみを要求することにしました。また、規制の対象となる財産の額が以前は資本の20分の1以上とされていましたが、改正法によって純資産額の5分の1超と変わっています。ちなみに、改正前に基準として「資本の額」を用いている規定がありますが、最低資本金制度廃止によりこの基準はもはや使えないので「会社の純資産額」を基準とするようになっています。もともと資本金が1000万円の会社でも純資産額が100万円しかない、更には債務超過という会社もあるので基準としては適切だと思います。
【出資の履行】
・  発起人は、設立時発行株式の引受後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につきその出資にかかる金銭の払込・財産の給付をしなければなりません(34条1項)。出資の履行を金銭でする場合を「払込」、不動産などの財産でする場合を「給付」と使い分けています。なお、不動産給付の場合、登記を移転する必要がありますが、このような「第三者に対抗するために必要な行為」は会社成立後でも構いません。金銭の払い込みは発起人が定めた銀行等においてする必要があります。手渡しなどではいけないということです。
・  なお、以前は会社を設立するに際して厄介な手続きとして、銀行や信金に出資金を持っていって、払込金保管証明書を発行してもらう必要があったことです。しかも、手数料を取られるだけでなく、付き合いのない人の設立する法人には関わりたくない金融機関としては、保管証明を断ることもありました。
 しかし、改正法によって、発起設立ならば払込金保管証明書は不要ということになりました。残高証明などで足りるというのです(募集設立の場合は必要です)。この残高証明は預金者なら誰でも出してもらえます。
 なお、以前は払込取り扱い機関を変更する際には裁判所の許可が必要でしたが、これも削除されています。
・  発起人のうち、出資を履行していない者がいるときは、発起人は、出資をしていない発起人に対し、期日を決め、その期日の2週間前までに、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければなりません(36条1項)。
 この通知を受けた発起人は、その期日までに出資をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失います。以前は、このような場合には失権手続きという手続きを踏んでから、権利を失うという取り扱いでしたが、改正法によって期日までに出資を履行しないことにより当然に権利を失うことになります。設立手続きをスムーズにさせるためです。
【発行可能株式総数の定め】
(定款で発行可能株式総数を定めていない場合)
・  定款の絶対的記載事項のところで少し説明したものです。発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意によって定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければなりません(37条1項)。
・  ただし、募集設立の場合には注意が必要です。払込期日又は払込期間の初日のうち最も早い日以降は、発起人は定款を変更することができない関係で(95条)、その日以降に、当該定款の変更をする場合には、発起人全員の同意ではなく、創立総会の決議によることになります(98条)。その日以前なら発起人全員の同意でも定められるし、創立総会まで先延ばしすることもできます。
(定款で発行可能株式総数を定めている場合)
・  この場合には、定款の規定のまま進めていくか、定款の規定を変更したい場合には発起人全員の同意(発起設立の場合には創立総会の場合もある)で変更できます。定款の規定の有無によって、定款変更が必要的か任意的かの違いがでてきます。
(定款で発行可能株式総数を定めている場合)
・  この場合には、定款の規定のまま進めていくか、定款の規定を変更したい場合には発起人全員の同意(発起設立の場合には創立総会の場合もある)で変更できます。定款の規定の有無によって、定款変更が必要的か任意的かの違いがでてきます。
第4節 設立時役員等の選任及び解任(発起設立)
・  発起人は出資の履行が完了した後、遅滞なく取締役などの役員を選任しなければなりません(38条)。
・  今回の会社法において、会社の機関設計の自由度が高くなっていますが、最低でも取締役は1人以上いなくてはなりません。取締役会という合議体にするか、監査役を設けるか等は一般的な中小企業であれば自由です。但し、この辺は、会社が公開会社(株式の一部又は全部が譲渡自由)か、非公開会社か、更には大会社かそうでないか、によって取締役会が必須機関になったり、監査役が必須機関になったりと、変化していきます。詳しくは、「機関」の章で説明します。
・  会社成立前はまだ法人格もない状態で、厳密に言えば「取締役」というものは存在しません。そこで、会社法では、あえて「設立時取締役」「設立時代表取締役」「設立時監査役」と用語を使い分けています。
・  定款による選任擬制というものがあります。発起設立においては発起人が取締役を選任しますが、定款で設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、又は設立時会計監査人に選任されたものとみなされます(38条3項)。ちなみにここには「設立時代表取締役」が含まれていません。
・  設立する会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は3人以上でなくてはなりません。監査役会設置会社の場合も3人以上必要です。(39条)


・  設立時役員等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定します(40条1項)。頭数ではありません。 
 設立時役員等の選任は発起人の出資の履行完了後になされます。ということは、出資金額に見合った議決権(1株(あるいは1単元)につき1個の議決権)というものが存在します。ですから、「議決権の過半数」という要件が出てくるのです。なお、株式の種類として取締役等の全部又は一部の選任について議決権を行使できないと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は当該取締役等となる設立時取締役等の選任についての議決権を行使することができません(40条3項4項)。
・  発起人は、株式会社の成立までの間、その選任した設立時取締役等を解任することができます(42条)。定款によって選任された取締役等も含みます。解任も選任と同様に、発起人の議決権の過半数をもって決定します。但し、設立時監査役を解任するには発起人の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって決定します(43条)。監査役は、会社の業務・会計をチェックするという職務の性質から、その地位を他の役員よりも安定させています。これは会社成立後も同様です。

第5節 設立時取締役等による調査(発起設立)
・  設立時取締役は(監査役設置会社であれば設立時監査役も)、選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければなりません(46条1項)。
①少額財産の特例又は有価証券の特例により検査役の調査を要しない場合
→当該現物出資財産等の定款価格が相当であること
②弁護士等の証明により検査役の調査を要しない場合
→当該現物出資財産等の定款価格が相当であることについての弁護士等の証明が相当 であること
③出資の履行が完了していること
④株式会社の設立手続きが法令・定款に違反していないこと
・  調査の結果、法令違反などの不当な事項があると認められるときは、発起人にその旨を通知しなければなりません(46条2項)。
 なお、設立する会社が委員会設置会社(次節で説明)の場合は、不当な事項があるか否かにかかわらず、調査終了の旨を発起人に通知して、なおかつ、その内容を設立時代表執行役に通知しなくてはなりません。
第6節 設立時代表取締役等の選定等(発起設立・募集設立共通)
・  設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合(委員会設置会社を除く)には、設立時取締役の中から、設立時代表取締役を選定しなければなりません(47条1項)。また、設立時取締役は、株式会社成立までの間、設立時代表取締役を解職もできます(47条2項)。 
・  選定・解職は設立時取締役の過半数をもって決定します(47条3項)。
・  ここで、「選任」と「選定」の違いを説明しておきます。選任は委任をイメージしてください。一方、選定は選任されてある地位を与えられたことを前提に受けた地位をイメージしてください。会社と取締役の関係は委任の関係です。会社から経営を委任され取締役として「選任」され、取締役の中から代表取締役を「選定」する。「選定」を使う地位は代表取締役・代表執行役・委員会設置会社の委員です。また選任の反対は「解任」、選定の反対は「解職」です。
【委員会設置会社の場合】
・  平成15年に委員会等設置会社が導入されました。会社法の施行に伴い委員会設置会社という名称になりましたが、目的とするところは同じで、「企業統治」です。取締役会は経営の監督に徹する。執行役に大きな権限を与え、迅速な意思決定をする。
 委員会設置会社は取締役の中から、取締役会の決議によって、各委員を選定します(400条3項)。各委員とは指名委員会・監査委員会・報酬委員会をいいます。「指名委員会」は株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定し、「監査委員会」は執行役等の職務執行の監査・監査報告書の作成などをします。そして「報酬委員会」は執行役等の個人別の報酬等を決定します。(この辺の詳細は、「機関」のところで扱います)
 なお、重要財産委員会の制度は廃止されています。
・  以前は、委員会設置会社は大会社(みなし大会社を含む)にしか、認められませんでしたが、大会社でなくても委員会制度を採用することができるようになりました。
・  委員会設置会社を設立する場合は、設立時取締役は設立時各委員を選定し、設立時執行役を選任します(48条1項)。そして、設立時執行役の中から設立時代表執行役を選定します。ただし設立時代表執行役が1人のときはその者が設立時代表執行役に選定されたものとされます。
・  選定・解職の方法も委員会非設置会社の場合と同様に、設立時取締役の過半数で決定します。
第7節 株式会社の成立(発起設立・募集設立共通)
・  株式会社は、本店所在地において設立登記をすることによって成立します。この時点で出資を履行した人(発起人・募集株式引受人)は株主となります。
・  登記は、いつでも申請できるのではなく、ある期間内にするよう要求されていますので、注意が必要です。「2週間」という期間内は共通するのですが、「いつから」という基準日がケースによって異なります(911条1項・2項)。
(発起設立の場合)
①設立時取締役等による調査が終了した日(委員会設置会社の場合は、設立時代表執行役が調査終了の通知を受けた日)
②発起人が定めた日
(募集設立の場合)
①創立総会の終結の日
②拒否権付種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
③変態設立事項を変更する創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
④譲渡制限株式又は全部取得条項付の設定に係る種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
⑤ある種類株主に損害を及ぼす恐れがあるとして種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日

・  会社が成立すると、株式の引受等に係る意思表示については、民法の適用が制限されます。会社成立後は、錯誤を理由として設立時発行株式の引受の無効、詐欺・強迫による取消の主張ができなくなります(51条2項)。なお、募集設立の場合で、引受人が創立総会で議決権を行使した場合も同様に無効・取消の主張ができなくなります。
 また、民法93条の心裡留保・民法94条1項の通謀虚偽表示の規定は、会社成立の前後を問わず、主張できません。
 一方、意思無能力・行為能力の制限・詐害行為取消は会社成立前後を問わず主張ができます。

                   会社成立前    会社成立後
1、錯誤・詐欺・強迫          可(※)        不可
2、意思無能力・行為能力
制限・詐害行為取消          可           可
3、心裡留保・通謀虚偽表示    不可         不可
※ 会社成立前でも、募集設立の場合で、創立総会で議決権を行使したときは「不可」となります。
 ここで、簡単に民法の規定を説明しておきます。「錯誤」とは表示した意思表示と真意が食い違っている場合で、意思表示をした人がそのことを知らない場合を言います。意思表示をした人がそのことを知っていれば、それが「心裡留保」です。更に相手側もそれを知っていれば「通謀虚偽表示」です。「錯誤」の具体例としては、¥1000と書くつもりが$1000と書いてしまった場合です。錯誤は勘違いなら何でも主張できるのではなく、意思表示の主要部分に錯誤がなくてはなりません。「心裡留保」の具体例としては、愛車を冗談で50万で売ると友人に言った場合です。友人が本気にして50万円を用意すると愛車を売らなくてはならなくなります(もっとも社会的に非常識な内容なら、無効だといえます)。「通謀虚偽表示」としては、AとBの間で土地を形式上売却する例があります(強制執行逃れ)。「意思無能力」は、精神病者・幼児など意思表示能力が完全に欠けている場合です。「行為能力の制限」は未成年者や被保佐人などです。「詐害行為取消」は、先ほど強制執行逃れの例を出しましたが、当事者ではない第三者である債権者がその売買契約を取り消せと主張できる制度です。
第8節 発起人の責任(発起設立・募集設立共通)
【現物出資財産等の不足額填補責任】
・  現物出資財産等について実際の価額と、定款記載価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、会社に対して連帯して当該不足額を支払う義務を負います(52条1項)。
   以前は引受・払込担保責任というものがあり、会社成立後も引受のない株式や申し込みが取り消された株式があった際は、これを代わりに引き受けなければならず、また、会社成立後も現物出資の給付が未済の場合には代価を支払う義務がありました。しかもこれは無過失責任で、自分に過失がないことを証明しても負う責任でした。
 会社法においては、このような規定はなくなり、不足額填補責任のみ残りました。これは、改正によって出資の払い込みが期日までになされない場合には当然に失権になるので、このような責任が不要になったことに基づきます。
・  また、現物出資において、弁護士等が、価格が相当であることの証明をしているのであれば検査役の調査が不要という規定がありました。にもかかわらず、不足額が生じている場合には発起人や設立時取締役と連帯して、不足額を支払う義務を負います。
・  但し、免責規定があります。発起人・設立時取締役は、①検査役の調査をちゃんと経ている場合か、②職務を行うにつき注意を怠らなかったと証明した場合(過失責任といいます)、責任が免除されます。なお過失がないことの立証は発起人等がしなくてはなりません。
 弁護士等の証明者は、注意を怠らなかったと証明すれば免責されます。
・  ②の過失責任には例外があります。募集設立の場合発起人以外にも会社に出資をしている人たちがいます。この人たちは金銭出資をしています。金銭の場合「不足」はありません。「不足」が問題となるのは不動産など現物出資がなされた場合です。とすると、過失がないことの証明があったとして、不足額を支払わなくてもいいとすると、金銭で出資した人との間で不公平が生じます。そこで、募集設立の場合には、無過失責任としています。ただし、①の検査役が絡んでいるならば免責されます(103条1項)。
【損害賠償責任】
・  発起人・設立時取締役・設立時監査役は、会社設立について任務を怠ったために会社に対し損害を生じさせれば、連帯してその賠償責任を負います(53条1項)。


【その他】
・  現物出資財産等の不足額填補責任・会社に対する損害賠償責任は総株主の同意があれば免除できます。会社のオーナーである株主が責任を免除するというのであれば当然認められます。しかし、第三者に対する責任は免除できません。これも当然です。当該第三者が権利を放棄するならともかく。当該第三者にとっては他人である株主が「権利を放棄」など言えるはずがありません。
・  会社が成立しなかった場合、発起人は連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担します(56条)。

第9節 募集による設立(募集設立)
・ ここからは、募集設立固有の内容です。
第1款 設立時発行株式を引き受ける者の募集
【募集】
・  発起人は、その全員の同意を得て、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができます(57条1項・2項)。
・  発起人は、設立時発行株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その全員の同意を得て、その都度、設立時募集株式について次に掲げる事項を定めなければなりません(58条1項・2項)。
①設立時募集株式の数(数種の株式を発行する場合は、種類ごとの数)
②設立時募集株式の払込金額(1株と引き換えに払い込む金額)
③設立時募集株式と引き換えにする金銭の払込みの期日(払込期日)又は払込期間
④一定の日までに設立の登記がなされない場合において、設立時募集株式の引受の取消をすることができるときは、その旨及びその一定の日
・  58条1項に「その都度」と規定しているのは、二次募集をする際にも改めて上の事項を定めなくてはならないということです。
・  募集の条件(払い込み金額など)は、株式の種類及び当該募集ごとに均等でなくてはなりません。株主平等の原則に基づきます。
【申し込み】
・  発起人は、募集に応じて設立時募集株式の引受の申し込みをしようとする者に対して、次に掲げる事項を通知しなければなりません(59条1項)。以前は株式申込証という書面がありましたが、不要になっています。また「紙」でなくても、インターネットを利用するなどの方法でも通知は可能です。
①定款の認証の年月日及びその認証をした公証人の氏名
②定款の絶対的記載事項、変態設立事項、設立時発行株式に関する事項、設立時募集株式に関する事項
③発起人が出資した財産の価額
④払込の取り扱いの場所
⑤その他、法務省令で定める事項
※法務省令には、発起人が割り当てを受けた設立時発行株式数等、株主名簿管理人に関する内容などが規定してあります。
・  上記③で、発起人が出資をした財産の価格を通知しなくてはならない関係で、発起人に出資の履行をしていないものがある場合には、当該発起人に対して当該出資の履行をすべきものとして定められた期日後でなければ、発起人は、上記の通知をすることができません(59条2項)。なお、この「期日」は第3節の【出資の履行】で説明した「失権」の日と同じです。
・  募集に応じて設立時募集株式の引受の申込をする者は、次に掲げる事項を記載した書面を発起人に交付しなくてはなりません(59条3項)。口頭ではいけません。ただし、発起人の承諾を得れば、電磁的方法(メール)で書面の代わりとすることもできます。承諾を要しているのは、発起人側に電磁的方法を採る体制の有無の確認等の理由からです。
①申込をする者の氏名又は名称及び住所
②引き受けようとする設立時募集株式の数
・  通知から申込までの一連の手続きは、総数引き受け契約が締結されている場合には不要です。総数引き受け契約とは、発起人と引受人との間で設立時募集株式の総数を引きける内容の契約です。この場合には、契約によって合意はなされているので、あえてこのような手続きをするのは無駄だからです。


【割当て】
・  発起人は申込者の中から設立時募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割当てる設立時募集株式の数を定めなければなりません(60条1項;株式割当自由の原則)。誰に割当ててもいいし、100株の申込に対し50株の割り当てでも構いません。この場合の発起人間の同意は全員の同意ではなく、原則どおり過半数で決定します。
・  発起人は、払込期日(払込機関を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに申込者に対して、当該申込者に割当てる設立時募集株式の数を通知しなければならなりません(60条2項)。なお、これら割当ての手続きも総数引き受け契約の際には省くことができます。

【払い込み】
・  いわゆる出資の履行です。引受人(割当てを受けた申込者・総数引受人)は払込期日又は払込期間内に、発起人が定めた銀行などの払い込みの取り扱いの場所において、払い込み金額の全額を行わなければなりません。この払込をしないときには、当該払込をすることにより株主となる権利を当然に失います。以前は、権利を失う前に失権手続きという「催促」の様な手続きがありましたが、これは会社法においては廃止されました。
・  発起設立の場合には払込金保管証明書は不要と説明しましたが、募集設立の場合には必要です。外部の者から出資者を募っているので厳格な払込の証明を要求したいからです。
 なお、銀行等は払込金保管証明書を交付した場合、証明書の記載が事実と異なることや金銭の返還に関する制限があることをもって成立後の会社に対抗することはできません(64条2項)。「金銭の返還に関する制限」とは預け合いと呼ばれています。銀行からお金を借りて、その借りたお金で払込をし、会社が成立した後、そのお金を返すというものです。この様な約束があったと銀行は主張できないということです。
第2款 創立総会等
・  払込が完了すると、発起人は創立総会を招集します。会社成立後の株主総会は取締役会(取締役)が招集しますが、創立総会は招集する人が違います。会社成立前の対外的活動はすべて発起人がします。
・  発起人は創立総会を招集する際には、次に掲げる事項を定めなければなりません。
①創立総会の日時場所
②創立総会の目的である事項
③創立総会に出席しない設立時株主が書面での議決権行使を可能とするときはその旨
④創立総会に出席しない設立時株主が電磁的方法での議決権行使を可能とするときはその旨
⑤その他、法務省令で定める事項
※法務省令には、③④における議決権行使期限等があります。
・  発起人は設立時株主の数が1000人以上である場合には、③の書面投票ができるようにしなくてはなりません(67条1項)。設立時株主に議決権行使の機会を与えるためです。大きな会社の場合、全員の株主が総会に出席することは困難です。そこで、改正法前から大会社(資本金5億円以上又は最終の貸借対照表の負債合計額が200億円以上)にはこの様な取り扱いを要求していました。しかし、今回の会社法では大会社でなくでも1000人以上株主がいれば、書面投票ができるようにしなくてはならないとしました。
【招集の通知】
・  創立総会を招集するには、公開会社の発起人は創立総会の日の2週間前までに、設立時株主(議決権を行使できない株式の株主を除く)に対して通知を発しなければなりません(68条1項)。一方、非公開会社の場合は、書面投票・電子投票ができる旨を定めた場合を除き、通知は1週間前までで結構です。さらに、設立する会社が非公開かつ取締役会非設置会社の場合には、定款でこの1週間という期間を短縮することができます。
・  招集の通知方法は自由です(電話でもよい)が、次の場合には書面で通知する必要があります。なお、この書面による通知に代えて、設立時株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができます。
①書面投票・電子投票ができる旨を定めた場合
②設立する株式会社が取締役会設置会社である場合。
・  招集通知には先ほどの招集決定事項①~⑤を記載・記録します。
・  設立時株主(議決権を行使できない株式の株主を除く)の全員の同意があるときには、招集の手続きを経ることなく創立総会を開催できます(69条前段)。ただし、書面投票・電子投票ができる旨を定めたときは、議決権行使のための準備期間を長めにとるために、省略できないようになっています(69条後段)。



【決議】
・  設立時株主は創立総会において1株につき1個の議決権を持ちます(72条1項)。なお、単元株式数を定めている場合には一単元につき1個の議決権をもちます。単元株とは例えば1000株を1つの単位とする制度で、1株の金額が低い価格のときに利用されます。
・  議決権が制限されている株式の株主は創立総会で決議に参加できませんが、株式会社の設立の廃止については内容の重大性から議決権を行使できます。
 また、成立後の株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有すること、その他の事由を通じて成立後の株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める設立時株主は議決権を行使できません(72条1項前段)。いわゆる相互保有株式ですが、例えば、設立中の会社をXとします。既存の株式会社Yの株式がXに現物出資され、XがYの総株主の議決権を4分の1以上保有することになった場合、YはXの創立総会で議決権を行使することができません。
・  創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行います(73条1項)。通常の株主総会の決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した当該株主の議決権の過半数)とは異なります。
 これが原則ですが次の2つの場合に要件が重くなっています。
①発行する全部の株式の内容として、譲渡制限を設ける場合には、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の半数以上(議決権数ではなく頭数)であって、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数
②発行する全部の株式の内容として、取得条項付株式(会社の判断で株主の株式を強制的に取得できる。敵対的買収の対抗策の1つ)の設定をする場合には、設立時株主全員の同意
 譲渡が制限されるよりも、株主にとって不利益度合いが強いので①より更に要件が重くなっています。
 譲渡が制限されるよりも、株主にとって不利益度合いが強いので①より更に要件が重くなっています。
・  創立総会は、あらかじめ創立総会目的事項として定められた事項についてしか決議をすることができませんが、①定款の変更②株式会社の設立の廃止、についてはあらかじめ創立総会目的事項として定められていなくても、決議をすることができます(73条4項)。
・  議決権の行使方法として、自分自身が直接、創立総会に出席しなくても代理人によってその議決権を行使することができます。この場合には、当該設立時株主又は代理人は、代理権を証する書面を発起人に提出しなければなりません。
 この書面に代えて電磁的方法としてメールを送ることも可能です。但し、発起人の承諾が必要です。発起人はこれらの書面等を創立総会日から3ヶ月間、保存・備置をしなくてはなりません。備置する場所は、会社成立前は発起人の定める場所(発起人の住所や本店所在予定場所などになると思います)、会社成立後は本店です。
 創立総会が複数回開催される場合には、総会ごとに代理権の授与をします。
・  設立時株主は、議決権の不統一行使が可能です(77条1項前段)。1株1議決権により、100株持っていれば100の議決権があります。この100の議決権を、例えば50は賛成で50は反対として行使できます。この様な、不統一行使は他人のために株式を保有している(信託)ケースで起こります。
 不統一行使をする際には、創立総会日の3日前までに、発起人に対してその旨及びその理由を通知しなければなりません(77条1項後段)。
 発起人は、設立時株主が他人のために設立時発行株式を引受けた者でないときは、不統一行使を拒むことができます。「賛成・反対を決め兼ねるので50議決権ずつ行使します」というのは拒否できます。
・  発起人は、創立総会において、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければなりませんが①当該事項が創立総会の目的である事項に関しない、②その説明をすることで株主共同の利益を著しく害する、③その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合、
には、説明を拒否することができます(78条1項)。
 なお、法務省令には、説明をするために調査が必要な場合、説明をすることにより株式会社その他の者の権利を侵害する場合、同じ説明を繰り返し求めてきている場合、その他説明をしないことに正当な理由がある場合、と規定しています。
・ 創立総会の議長は、当該創立総会の秩序を維持し議事を整理し、議長の命令に従わない者や総会の秩序を乱す者を退場させることができます(79条)。
・  創立総会の議事録を作成しなくてはなりませんが、この議事録は10年間備置しなくてはなりません(81条)。
 備置する場所は、会社成立前は発起人の定める場所、会社成立後は本店です。
・  創立総会決議を省略できる場合があります。
 発起人が創立総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき設立時株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の決議があったものとみなされます(82条1項)。これらの書面等も10年間の備置義務があります。起算点は決議があったものとみなされる日です。
・  設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、その設立に際して発行する、ある種類の株式の内容として、定款に『株主総会において決議すべき事項(A事項とする)について、当該決議のほか、種類株主総会の決議があることを必要とする』旨の定めがあるときは、A事項は、その定款の定めの例に従い、創立総会決議のほか、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会の決議がなければ効力が生じない、という規定があります(84条)。分かりにくい文章ですが、要は、法律案は衆議院と参議院の可決があって可決されるのと同じ感じで、普通の創立総会とは別に、種類創立総会の決議がなければならないということです。(種類株式については「株式」編で説明します)。

第3款 設立に関する事項の報告
・  発起人は、株式会社の設立に関する事項を創立総会に報告しなければなりません(87条1項)。
・  また、発起人は次に掲げる場合には各々に定める事項を記載した書面を創立総会に提出しなくてはなりません(87条2項)。書面の代わりに電磁的記録の提出でもよいです。
①定款に変態設立事項がある(検査役の調査を省略できる場合を除く)→検査役の調査 結果の報告の内容
②弁護士等の証明により検査役の調査を要しない場合→価格相当性についての弁護士等の証明の内容
・  発起人が設立時株主の全員に対して創立総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を創立総会に報告することを要しないことにつき、設立時株主の全員が書面又は電磁的方法により同意の意思表示をしたときは、当該事項の創立総会への報告があったものとみなされます(83条)。
第4款 設立時役員等の選任及び解任
・  発起設立の場合には役員の選任・解任は発起人がします。しかし、募集設立の場合には、創立総会の決議によって行います(88条)。
・  累積投票という制度があります。通常、取締役選任決議は多数の取締役を選任する場合でも、取締役の候補全員につき1回の決議で選任します。とすると、現取締役を支持する多数は株主の意向で取締役の全員が選任されることになってしまう恐れがあります。そこで、少数派株主に配慮するためにこの制度があります。
 たとえば3人の取締役を選任する場合、株主は1株につき3個の議決権を与えられます。多数派(80株)がB1,B2,B3,B4,B5 の取締役を選任したいと考え、少数派(20株)がC1を選任させたいと考えているとすると、多数派は80×5=400議決権、少数派は20×5=100議決権、を有します。少数派は100議決権すべてをC1に投票するので、多数派としてはB1,B2,B3,B4,B5全員に80議決権ずつを投票しても全員を選任させることはできません。B1からB4に各々100議決権を投票し、B5は犠牲にせざるを得ません。比例代表制のようなものです。
 この様に以前から、少数派株主の保護の制度として、累積投票制度を認めていました。以前は創立総会において、累積投票制度は認められていなかったのですが、改正法において、累積投票を認めています。よって、累積投票を希望する設立時株主は累積投票によるべきことを発起人に請求できます(請求がないと通常投票です。つまりB1~B5選任の件に賛成か否か→よって多数派が勝つ。但し、創立総会の決議要件は通常の株主総会の決議要件より重くなっているので、注意してください)。
 この累積投票によると確かに少数派株主を経営陣に送り込むことができます。しかし、各取締役の対立を招くため、迅速な経営判断ができず、経営不振を招きかねません。そこで、定款で累積投票制度を排除でき、その場合には累積投票によることを請求できません。また、累積投票制度は取締役選任に限ります。監査役などは含みません。