クーリングオフとは
 クーリングオフの方法を、新聞勧誘をケースとして説明いたします。大学生Aと新聞勧誘員・新聞店が出てきます。大学生の言葉は青文字・新聞勧誘員・新聞店の言葉は紫文字です。
 1人暮らしの大学生Aが、夕方1人でアパートにいると、チャイムが鳴りました。
 「私、○○新聞の販売員をしている山本(仮名)ですが、すいません、仕事中に雨が降ってきてしまいまして…」
(切羽詰った状態でした。本当に雨が降ってきてしまい困っていたのか、相手の関心を引くための演技なのか、人を『ぐっと』引き付ける方法としては有効な手段と言えます。)
 「あの自転車に乗ってきたんですけど、後ろにダンボールがありますよね」
(外を見ると自転車があり、自転車の荷台にはダンボールがあります。)
→「ええ、ありますね」
 「洗剤が12箱あるんですけど、この雨の中持って帰ると雨に濡れて使い物にならなくなってしまうものですから、是非引き取ってもらいたいんです。緊急事態ですから特別です。
 ただですね、ただであげちゃうと、店の人に怒られちゃうので6か月分で良いですから新聞とってもらえませんか?」
→「6ヶ月ですか?」
 「なんとか、6ヶ月にして欲しいんです」
→「他に新聞取ってるし…」
 「どこの新聞を取っているんですか」
→「▽▽新聞です」
 「その▽▽新聞の契約期間が終わったあとで良いですから、お願いします。あの洗剤を無駄にしてしまうのももったいないですから、お願いします。」
→「うーん、じゃあ3ヶ月だけなら」
 「ごめんなさい、3ヶ月であれだけの洗剤をあげたとなると、店の人に説明できないんです。通常は1か月分で洗剤1箱ですから。3か月分で12箱あげると、やりすぎということで説明に困ってしまうので、せめて、緊急事態だから1ヶ月につき2箱あげました、という形にしたいんです。なんとか6ヶ月でお願いします」
→「わかりました」
 というわけで、大学生Aは6か月分の新聞購読契約を締結しました。
(ここでの、セールストークポイントとしては、導入の場面で営業を前面に出さず、雨が降って困っていますという『サプライズ』によって関心を引き付けていること、特別に洗剤を多めにあげるという『今だけチャンス』で押していることです。さらには、店の人に怒られるという『かわいそうな人』を演出しています。)
 後日、Aはよく考えてみて、無駄なことをしたと思うようになります。
 『そういえば、契約書面の裏側にクーリングオフができると書いてあったな。クーリングオフしちゃおうか。』
ということで、クーリングオフすることになりました。
……勧誘員が来た日から5日後……
大学生Aは○○新聞□□販売店に電話をしました。
 「はい、○○新聞□□販売店です。」
→「すいません、5日前にお宅の勧誘員がうちに来て、契約をしたんですけど、クーリングオフさせていただきたいと思います。」
 「勧誘、強引でしたか?」
→「ええ、ちょっと…」
 「では、契約書面の裏に、住所とお名前と、クーリングオフします、という一言を書いて、こちらまで持って来て下さい。あと、勧誘員が置いていった物も、持って来て下さい。」
(クーリングオフは書面でする必要があるので、電話での意思表示では足りません。ここでは、契約書面の裏側に一言書くことにしてあります)
 あっさりと終了しました。本来の姿です。内容証明郵便を送ることもありませんでした。新聞勧誘が訪問販売ではあるものの、悪徳とは言えないところです。
 しかし、販売店は紳士的であっても、勧誘員はそうではないことが結構あります。特に勧誘団といわれる輩は、平気で脅迫めいた事をする人もいます(個人的には警察に告訴すべきと思います)。
◎書面の交付
 Aは、クーリングオフという制度を耳にしたことはありますが、その内容を知りませんでした。その内容を知ったのは契約書面に記載があったからです。特定商取引法は、契約書面にクーリングオフに関する事項を記載することを要求しています。もしも事業者が書面を交付しなかったり、書面の記載に不備があったりしたときは、罰金刑が用意されているので、事業者は契約書面を交付するし記載事項についても不備はないのが通常です。
 裁判例の中に、書面の交付がなかった場合について契約から2年後にクーリングオフを認めたものがあります。
 本来は、書面の交付を受けてから8日以内(例外あり)にクーリングオフをしなければなりませんが、書面の交付がないとクーリングオフの起算日がまだ来ていないことになります。書面の記載事項の一部が欠けていたり、ウソの事が書かれていたりしたときも同様に考えて良いでしょう。
 Aはクーリングオフの内容を契約書面で知っています。それほど書面は重要です。従って、書面を軽視する業者に対しては厳しく対応すべきです。また、法もそのように取り扱っています。
 『このことは、クーリングオフ期間が過ぎても、クーリングオフができる場合がありうることを意味しています。』
 あきらめるのは、早いです。
 クーリングオフ以外にも契約取消の手段はあります。詐欺・強迫による取消などです。
◎クーリングオフのしかた(新聞勧誘の場合)
 今回のAはすんなりとクーリングオフできました。相手が良心的な業者であれば、このようなこともあります。
 Aは新聞店に電話をして、クーリングオフの旨を申し出ていますが、クーリングオフは書面によってする必要があります(特定商取引法9条1項)。
クーリングオフ通知書

 私は、○年○月○日、貴店の販売員から、○○新聞6か月分の購買契約を締結いたしましたが、クーリングオフによって取消いたします。なお、販売員の置いていった景品(洗剤12個、ビール券○枚)はお返ししたしますので、引き取りに来て下さい。

発信日  ○年○月○日
発信者  静岡県○市○町1-1-1
A   ㊞
被発信者 静岡県…    
○○新聞□□販売店  御中
もしも、内容証明郵便(配達証明付)で送付する場合には、1枚の紙に書ける文字数が決まっています。また、書式も決まっています。具体的には、1行に付き20文字までで、行末の『。』『、』も文字数に含まれます。また、1枚に付き26行までです。これを3通用意して、郵便局へ持っていって下さい。
 ポイントとして、①契約日、正しくは契約書を受け取った日を明記します。クーリングオフ期間がいつから始まっているのかは重要だからです。②商品名(ここでは○○新聞6か月分の購読です)、③発信者、④被発信者を書きます。③と④は誰が誰に対して通知しているかということです。普通の手紙でも書くでしょう(住所を忘れずに)。⑤取り消し日として通知を発信した日(郵便局に出した日)を書きます。クーリングオフの期間内にクーリングオフをしていることを明らかにするためです。
 この様な通知書を、新聞店に送ります。内容証明郵便であれば確実です。ただ、新聞購読のクーリングオフのために、1200円以上の郵便代を払うのはもったいないです。Aの様に電話してみれば紳士的な対応をしてくれる新聞店が普通ですので、電話した上で、通知書を手渡しするか、普通郵便で送っても構わないでしょう。
◎クーリングオフチェックポイント
 クーリングオフは『契約を守らなければならない』という民法の原則を歪める制度です。従って、クーリングオフには条件があります。
① 販売方法が特定商取引法により規制の対象となっていること。
② 購入したものが特定商取引法で指定された『指定商品』『指定権利』『指定役務』であること。
③ 申込書面・契約書面を受け取ってから8日以内であること。
④ 例外・適用除外に該当していないこと。
 これらのステップを踏む必要があります。
① 特定商取引法の規制対象となる販売方法
A;訪問販売…ここにはキャッチセールス、アポイントメントセールス、ホームパーティー商法、SF商法(催眠商法)等も含みます。
B;通信販売
C;電話勧誘販売
D;連鎖販売取引(マルチ商法)
E;特定継続的役務提供…これは一定期間あるサービスを受ける契約、例えばエステ、英会話教室、家庭教師、結婚相手紹介サービスなどがあります。
F;業務提供誘引販売取引…いわゆる内職商法・モニター商法をいいます。
G;ネガティブオプション…勝手に商品を送りつけてくるものです。
②指定商品・指定権利・指定役務
 特定商取引法によって指定された商品・権利・サービスのみがクーリングオフの対象となります。もっとも、非常に多くの商品が対象となっています。指定されていないものとして生鮮食料品・石油などがあります。
③書面を受け取ってから8日以内
 『8日以内』には、書面を受け取った日その当日も含みます。なお、取引内容によっては期間が延長されているものもあります。マルチ商法や内職商法などです。
 また、書面を受け取っていなかったり、書面に記載不備があったりすればクーリングオフ期間がスタートしないことになるので、8日を過ぎていてもクーリングオフが可能となります。
④例外・適用除外
A;指定消耗品の使用
B;現金取引で、その金額が3000円未満
 『悪徳業者お断り』というステッカーを2980円で、即金で購入したケースだと、この例外に当てはまり、クーリングオフができません。 
C;営業用の商品・権利・役務の契約
  事業者が消費者としてではなく、営業主として契約した場合には、消費者保護のための特定商取引法は適用されません。これを悪用している業者が増えています。その場合には、民法の詐欺・強迫による意思表示の取消などを用いることになってきますが、必ずしも簡単ではありません。
D;消費者(客)のほうから業者を呼び出した場合
E; 過去1年間に1回以上の取引をした業者との契約(ただし、店舗を構えていない業者との契約については過去1年間に2回以上の取引)
F; その他、適用除外ケースがあります。
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